鹿児島市内 島津家を感じられる5か所

訪れると、より深く島津家を感じられるスポット

 今回は「訪れると、より深く島津家を感じられる5か所(鹿児島・基礎編)」と題して、皆さまにおすすめの県内5か所を、写真を含めて、ご紹介いたします。記事を読んで、旅行気分を味わって頂けたら嬉しいです。

 

 

御楼門

 2020年3月、かつての鹿児島城の御楼門が復元されました。高さ、幅がそれぞれ約20メートルある櫓門です。鹿児島城(鶴丸城)は慶長6年(1601)頃に、島津家18代家久(当時忠恒。以後家久と記す)が造らせた、島津氏の居城です。

 家久は当初、現在の姶良市西餅田の建昌城を居城とし、蒲生竜ヶ城や加治木城などをその出城とする構想を抱いていましたが、父・義弘の反対により断念しました。これは、長年本拠地としていた鹿児島を離れる不利益を考慮してのことです。次に家久が考えたのが、自然の要塞である上山城(城山)と、その麓の居館を一体とした新たな城の建設でした。これが鹿児島城、通称・鶴丸城です。こちらも「海に近すぎる」「兵船からの攻撃を受けやすい」と父は反対しましたが、家久は自説を曲げませんでした。

 麓の居館というのが、おおよそ現在の歴史・美術センター黎明館とその周辺の位置にあたります。上山城は、その裏手の山頂部に存在しました。写真をご覧頂ければ一目瞭然、切り立ったシラス台地の壁が「城の城壁」としての役割を果たしています。出来たばかりの新しい御楼門から、当時の「鹿児島の城」の姿を想像してみてください。

 
 

 

照國神社

 城山を背景に建つ「照國神社」も、島津家を感じることが出来る場所です。島津家28代斉彬を御祭神とし、日々県内外多くの参拝者が訪れています。

 照國資料館も併設されていて、斉彬に強い影響を与えた曾祖父・重豪についてや、斉彬の事績について学ぶことができます。近くには、斉彬、弟の久光、29代忠義の像も建っていて、ゆっくりと時間をとって、訪れて頂きたい場所です。

 

 

福昌寺跡

 玉龍山福昌寺は、長く島津家の菩提寺でした。宗派は曹洞宗です。2020年3月、国の文化財に指定されました。応永元年(1394)、神仏を厚く崇敬した島津家7代元久が、伊集院忠国の11男・石屋真梁(せきおくしんりょう)禅師を招いて創建しました。

 境内は非常に広大で、本堂・大門などの七堂伽藍の他、歴代太守の御位牌殿・禅堂・鐘楼・観音堂・池の上熊野権現社・一切経蔵など、数多くの建物が立ち並びました。

 僧侶も多いときには1,500名ほど在籍したようです。当然、彼らの炊事場や休息所、作業場もありましたので、相当な規模だったことが想像できます。福昌寺は、九州はもとより中国・四国・北陸まで末寺があり、その数は2,000とも3,000ともいわれています。明治2年に廃寺となりましたが、現在も美しく整然とした墓所として、多くの方が墓所参りに足を運ばれています。

 
 

 

国指定名勝「旧島津氏玉里邸庭園」

 鹿児島市玉里町にある旧島津氏玉里邸庭園は、天保6年(1835)に島津家27代斉興によって築庭されました。斉興の御印(おしるし)が「玉印」であったことから「玉里邸」と名付けられたとされています。御印とは、身分の高い人物に仕える人々が「名前を直接書く、呼ぶことは恐れ多い」と使うようになった、個人を示す印のことです。現在も、皇室にその文化が残っています。

 斉興の没後、妹の勝姫が一時住んでいましたが、明治10年(1877)の西南戦争により主不在となりました。その後、28代斉彬の弟にあたる久光が再築しています。特徴的な黒門は、明治20年(1887)の久光国葬の際に造られました。鹿児島市内は、第二次世界大戦で大きな被害を受けましたが、茶室や灯篭などは戦火を免れ、今もその姿を見ることができます。

 
 
 

 

国指定名勝「仙巌園」

最後に、宣伝のようで恐縮ですが、仙巌園をご紹介します。

 仙巌園(通称・磯庭園)は、江戸時代の初め、万治元年(1658)に島津家19代光久によって島津家別邸として築かれたものです。それから今日に至るまで360年以上にわたり歴代の当主に受け継がれてきました。幕末には日本初の工場群・集成館が隣接地に造られており、このエリアが2015年に世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄、製鋼・造船・石炭産業」に登録されています。

お庭の面積はおよそ1万5千坪(50,000㎡)で、国の名勝にも指定されています。

 仙巌園内に関しては、皆さまが現在ご覧になっているホームページに、さまざまな魅力をご紹介させて頂いています。SNS(FacebookInstagramTwitter)でも、日々の様子を掲載しておりますので、ぜひ覗いてみてくださいね。

 島津家の歴史に関しては、仙巌園に隣接する博物館・尚古集成館に展示してあります。足をお運びください。別館ショップにて各種書籍も取り扱っております。

 
 

 以上、いかがでしたか。新しく建てられた御楼門、国の文化財に指定された福昌寺、美しい玉里邸、にぎやかな天文館に仙巌園。この記事をご覧になった皆さまが、楽しい旅行気分を味わって頂けますように。



【投稿】2020年11月13日



小平田 史穂

小平田 史穂

尚古集成館学芸員
鹿児島大学法文学部卒業。
放送大学非常勤講師 等
南日本文学賞詩部門受賞。
鹿児島県文化芸術振興審議会委員

著作
『みんなの西郷さん』
『復刻版 炉辺南国記』尚古集成館、山形屋にて販売

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